日本消化器外科学会雑誌
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迷入膵より発生した粘液産生十二指腸癌の1例
和久 利彦上塚 大一渡辺 直樹森 隆椎木 滋雄中井 肇折田 洋二郎原藤 和泉
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1996 年 29 巻 12 号 p. 2289-2293

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抄録

迷入膵より発生した粘液産生十二指腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は81歳の女性で, 食思不振を主訴に近医を受診し, 十二指腸球部に潰瘍性病変を指摘され当科入院となった. CTでは十二指腸球部に嚢胞状変化をともなう2cm大の腫瘤が認められた. 内視鏡検査にて球部大轡後壁よりに陥凹性病変を2か所に認め生検で腺癌と診断された. 十二指腸癌の術前診断で開腹術を施行したが, 腹腔内洗浄細胞診にて悪性細胞を認めたため, 幽門側胃切除術を行った. 病理組織学的には, 高分化乳頭腺癌と一部に粘液癌が混在し, 腫瘍の主座は筋層に存在していた. また腺房細胞, 膵導管, ランゲルハンス島を備えたHeinrich I型迷入膵が腫瘍に接して存在することより迷入膵が癌化した症例と考えられた. 迷入膵より発生した十二指腸癌はきわめてまれであり, 本邦において自験例を含め4例に過ぎなかった.

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