症例は心窩部痛を主訴とする69歳の男性.内視鏡的逆行性膵管造影では膵管癒合不全が認められ, 膵頭部背側膵管に約2.5cmの不整な狭窄とその尾側膵管の途絶を認めた.腹側膵管には悪性所見は認めなかった.CTでは膵頭部に径4cmの腫瘤を認め, 門脈への浸潤が疑われた.以上より, 膵管癒合不全の背側膵から発生した膵頭部癌と診断し, 膵頭十二指腸切除術, 門脈合併切除術を施行した.切除標本では腫瘍は3.5×3.8×4.0cmの結節型の膵癌で膵頭部の大半を占め, 膵頭下部辺縁に正常な腹側膵が三日月状に残存していた.
膵管癒合不全に発生した膵癌の論文報告はいまだ少なく, 本邦では自験例が25例目である.これらを集計すると, 背側膵癌が24例を占めること, 閉塞性黄疸をきたしにくいなどの特徴がみられた.