日本消化器外科学会雑誌
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粘膜下層浸潤胃癌に対する縮小手術適応の可能性についての検討
藤井 敬三岡島 邦雄磯崎 博司原 均野村 栄治左古 昌蔵泉 信行馬渕 秀明西口 完二
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1998 年 31 巻 10 号 p. 2055-2062

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抄録

早期胃癌のうち粘膜下層浸潤癌 (以下, sm癌) に対する縮小手術の可否を論ずるため, 粘膜下層浸潤程度 (sm1, sm2, sm3) 別に腫瘍径, 肉眼型, 組織型とリンパ節転移, リンパ管侵襲との相関を検索した. リンパ管侵襲を検索事項としたのは, これがリンパ節転移の初期像と考えられ, 微小転移の1形態と見なしうるからであり, これらリンパ管侵襲と関連する臨床病理学的諸因子の検討は縮小手術の適応決定に関わる重要な情報をもたらすと考えたからである. その結果, sm浸潤程度および組織型に関わらず10mm未満の症例, 20mm未満の隆起型, そして20mm未満のsm1, sm2の低分化型ではリンパ節転移を認めなかった. しかしリンパ管侵襲からの検討では10mm未満・sm1・分化型の症例のみリンパ管侵襲は認めず, これらの症例ではリンパ節郭清は省略可能である. しかし, 10mm未満のsm1の術前診断の正診率は極めて低率であり, 術前にSM癌と診断されたものにはリンパ節郭清は必要と考える.

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