日本消化器外科学会雑誌
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膵癌長期生存例からみた浸潤性膵管癌に対する治療戦略
羽鳥 隆今泉 俊秀吉川 達也中迫 利明原田 信比古高崎 健
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1999 年 32 巻 4 号 p. 1089-1093

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抄録

1996年までに切除した浸潤性膵管癌438例のうち, 5年以上長期生存した長期生存群17例と, 根治度A, B がえられたものの1年未満で癌再発死亡した早期 (再発) 死亡群29例を対象とし, 膵後方浸潤 (rp) の有無別に組織学的所見, 術式, 再発様式, quality of life (QOL) について比較検討した. rp (-) 例では, PL郭清を伴うD1+αが多かったが, ともに, 膵外神経叢浸潤 (p1) は陰性で, 長期生存群でりんぱ節転移n (+) が33%と少なかった. 早期 (再発) 死亡群では肝転移が75%であった. rp (+) 例では, PL郭清を伴うD1+αまたはD2が行われ, 長期生存群でn (+) が38%と少なく, 乳頭腺癌や高分化型管状腺癌が75%と多かった. 早期 (再発) 死亡群では肝転移, 後腹膜再発が68%, 40%で, 再発に伴うQOLの低下がみられた. 以上より, rp (-) 例ではD1+α以下の術式と効果的な肝転移対策, rp (+) 例ではPL郭清を伴うD2と局所制御のための補助療法, 効果的な肝転移対策が膵癌長期生存には必要と考えられた.

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