日本消化器外科学会雑誌
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stage III/IV膵頭部癌に対する拡大郭清 (D2α) の評価と幽門輪切除-亜全胃温存術式の意義
大東 弘明石川 治山田 晃正佐々木 洋安田 卓司村田 幸平亀山 雅男平塚 正弘甲 利幸今岡 真義
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1999 年 32 巻 10 号 p. 2432-2436

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抄録

進行膵癌 (stage III+IV) に対する外科的切除および併用治療の意義と幽門輪切除・亜全胃温存膵頭切除術式 (PrPD) の有用性を検討した. D2α郭清 (併用療法非施行例) を施行したstage IIIおよびIV膵癌の5年生存率はおのおの29.3%で, D1郭清の11.0%に比べて有意に良好であった (p<0.05). しかし, t3症例に対してD2α郭清を施行しても肝転移再発が高率で5年生存率は0%と低かったが, 肝転移防止を目的とした2-channel療法を併用すると25%まで向上した (p<0.05). 幽門部リンパ節や周囲結合織は肉眼的に転移がなくても, 組織・細胞・遺伝子診断を併用すると33%が陽性となった. 術後QOL向上をめざしたPrPDは胃2/3切除PDに較べると, 胃内容停滞時間が長く, 術後早期体重減少低下を軽減することができた. 以上より, 進行癌症例に対しては拡大郭清を伴う膵頭切除に加えて, 肝転移防止対策などの補助療法併用が不可欠である. その際, PrPDは幽門部での癌遺残の危険性がないだけでなく, 術後体重低下の予防にも有用であった.

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