日本消化器外科学会雑誌
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門脈ガス血症の手術適応
本症12例の経験から
金丸 仁横山 日出太郎白川 元昭橋本 治光吉野 吾朗高津 光杉山 高秋山 敏一
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2002 年 35 巻 8 号 p. 1369-1376

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抄録

はじめに: 門脈ガス血症(以下, 本症と略記)は予後不良で緊急開腹術が必要と考えられてきたが, 最近自然軽快する例の報告も多く, 手術適応の判断が難しい. われわれの12例の経験と文献報告例から本症の手術適応につき考察した. :方法: 腸管壊死があり開腹術の適応であった5例(A群)と, 腸管壊死が無く経過観察可能であった7例 (B群) を比較した. :結果:: A群は全身状態不良で, 5例全例に腹膜刺激徴候を認めた. B群では全身状態は良好で, 2例を除き腹膜刺激徴候を認めなかった. A群では全例熱発を認めたがB群では4例で熱発を認めなかった. 白血球数はA群5例, B群5例で10,000/mm3以上であった. CRPは, 不明例以外で, A群では4.3mg/dlと7.0mg/dlの2例のほか2例が20mg/dl以上であったがB群では全例20mg/dl以下でうち5例は1.1mg/dl以下であった. :考察: 本症の成因には, 腸管壊死からの感染として, E. coliなどのガス産生菌が関与する場合と, 非絞扼性腸閉塞の場合など, 単に腸管内圧の上昇によって発生する場合があるが, 後者の成因の場合は経過観察が可能と考えられる. 手術適応は腸管壊死の有無にかかっているが, その判断は, 全身状態, 腹部所見, 熱発の有無など, 理学所見の正確な把握が重要で, 一般の急性腹症の場合となんら変わるところはない. 検査値としては白血球数よりもCRPが手術適応の参考になる.

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