2006 年 39 巻 4 号 p. 464-469
症例1は62歳の男性で, Child-Pugh分類CのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼, TAEを繰り返し行っていた. 右胸水による呼吸困難で入院, 胸腔穿刺で6,000mlの排液を認めたが, 細胞診は癌陰性であった. その後も多量の排液が続き, 塩分制限, 利尿剤・Alb製剤の投与, 胸膜癒着を行ったが改善しなかった. 入院後第39日目経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術 (以下, TIPSと略記) を施行, 右肝静脈から門脈への短絡路を形成したところ, 胸水量は著明に減少し退院可能となった. 症例2は61歳の男性で, Child-Pugh分類BのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼, TAEを繰り返してきた. 制御不能の右胸水で入院, 保存的治療で改善せずTIPSを施行した. 直後に肝性脳症で再入院し, 分枝鎖アミノ酸製剤による治療を要した. その後, 意識状態は改善し, 現在は胸水の貯留を認めず外来通院している.