非常にまれな胃異所性膵から発生した腺癌の1例を報告する. 症例は64歳の男性で, 胸膜炎の経過観察中に, 胸部CTにて胃幽門部大彎側に径3.0cmの腫瘤を偶然に指摘された. 上部消化管内視鏡検査, 超音波内視鏡検査を施行したところ, 幽門前庭部になだらかな隆起性病変を認め, 筋層を主座とする粘膜下腫瘍を認めた. Retrospectiveには2年前のCTでも存在しており, 腫瘍径にほとんど変化を認めなかった. しかし, 幽門狭窄症状を来したため, 胃gastrointestinal stromal tumorの術前診断のもと腹腔鏡下幽門部分切除術を施行した. 腫瘍の一部を術中迅速診断に提出したところ, 胃異所性膵と考えられた. 永久標本では粘膜下層から漿膜下にかけて腫瘍が存在し, 一部に腺癌への移行像を認め, 異所性膵から発生した高分化型腺癌と診断された. 粘膜下腫瘍の治療においては, 悪性腫瘍が併存する可能性も念頭におく必要がある.