日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
腫瘍破裂による腹腔内出血で発症した肝血管筋脂肪腫の1例
粟根 雅章内藤 雅人松末 智本庄 原小橋 陽一郎前田 浩晶
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2010 年 43 巻 7 号 p. 724-729

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抄録

 症例は48歳の女性で,突然の右季肋部痛のため当院を受診した.CTにて肝S8に径6 cmの腫瘤を認め,腹腔内に中等量の液体貯留を来していたことより腹腔内出血を来していたと考えられた.腫瘍は造影CTで動脈性早期濃染を伴い,MRIではT1強調画像で低信号,脂肪抑制T2強調画像で高信号であり典型的ではないが肝癌と診断した.待期的に肝部分切除を行った.病理組織学的検査では類上皮細胞のみからなる充実性,類洞状増殖を認め肝細胞癌類似の所見であったが,HMB-45陽性であることから肝血管筋脂肪腫と診断された.肝血管筋脂肪腫は血管,平滑筋,脂肪の成分をさまざまな割合で含むまれな良性腫瘍である.その多様性のため,画像・病理の診断が困難なことがある.肝血管筋脂肪腫の破裂は極めてまれであるが,術前診断が困難であること,悪性化の可能性があることなどからも,病態によっては切除の適応とすべきである.

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